健康産業への視点
治療は「複数」、予防は「一通り」
●究極の健康とは、ビクともしないこと
皆さん、こんにちは。評論家でタレントの山田五郎さんが亡くなられたという報道に接しました。死因は原発不明がんとのこと。闘病されていたことは知りませんでしたが、亡くなる直前に撮影されたYouTubeを拝見すると、見た目は比較的お元気そうでありながら、「食事が食べられなくなった」と話されていました。「人は食事が食べられなくなってから、約2週間で亡くなる」と聞いたことがありますが、はっきりとした口調だったし、見た目も痩せている印象ではなかったので、「食べられなくなる」ということの命への影響を改めて感じました。
がんにはさまざまな種類があり、それぞれ治療法も異なります。一方で、がんそのもののリスクを下げるために必要なことは、適度な運動、適正体重の維持、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠など、ある程度共通しています。このように、病気を発症した後の治療は、その種類や状態によって「複数」ですが、病気になる前にできることは(上記のように)基本的な生活習慣を整えるという、ほぼ一通りの方法に集約されます。ここには重要な示唆があると思います。病気ごとの知識を増やすことも必要ですが、それ以上に大切なのは、多くの病気に共通する健康の土台を整えることです。健康づくりとは、特別な対策を施すことではなく、当たり前のことを、無理なく継続できる生活をつくることだと思います。
もちろん、私自身、「5つの健康習慣(運動・栄養・休養・心・つながり」を実践しているからといって、病気等にならない保証はありません。心身のことを完全にコントロールするのは不可能といっていいでしょう。私が必要だと思っているのは、病気等になる確率を下げることです。そして、それをビクビクしながら行うのではなく、前向きに、積極的に続けることが大切だと確信しています。以前から言っているように、私は究極の健康づくりとは「ビクともしないこと」だと思っています。よく動き、よく食べ、よく眠り、人とつながる。そうした日々の積み重ねによって、多少のことでは崩れない強い身体と心をつくることです。健康とは人生を力強く生きられる状態をつくり、維持することだと思います。
●理想のジムづくりは、志ある仲間との関係性から始まる
では、「ビクともしない強い状態」は、どうすればつくれるのでしょうか。繰り返しになりますが、それは適度な運動、適正体重の維持、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠などでしょう。が、そんなことは誰でも知っています。知っているけど、わかっているけどできないのです。皆さんだって「読書が大切」ということはわかっているはずです。しかし、習慣的に読書ををしている人は約15%しかいません。「海外へ行くことが視野を広げる」ということだってわかっているのに、約83%はパスポートすら保有していない。そんなものなんですよ。
このような現状だからこそ、ジムがあるのではないでしょうか。単に運動器具を置き、無人化したり、急ごしらえの「バイト」を立たせて安全管理をする場所ではないでしょう。わかっているけどできない人に、定期的に通う予定をつくり、お客さま一人ひとりと向き合い、仲間と顔を合わせながら、健康に必要な行動を習慣にしていく。それがジムという場所です。と、私は思っているのですが、皆さんはいかがでしょうか。おそらく、この文章を読んでいる多くの方が、「その通りだ」と感じているはずです。しかし現実を見れば、ジムで行われていることも、皆さんの行動もさまざまです。なぜ「似た考え」を持っているのに、「違う行動」になるのでしょうか。それは、どこまで本気でそう思っているかの違いだと思います。頭では「そうあるべきだ」と理解していても、本気で実現したいと思わなければ、人は目の前の忙しさや慣習に流されてしまいます。
そう言っている私も、理想のジムづくりから想いが遠ざかっていた時期がありました。しかし、もう一度その火を灯してくれたのは、同じ志を持つ仲間の存在でした。本気で予防社会をつくろうとしている仲間と語り合う中で、「やはり目指すべき方向はこれだ」という確信を取り戻すことができたのです。だからこそ、少しでも私と同じ問題意識を持っている人は、今いる環境の中だけで完結しないでほしいと思います。日常とは違う価値観に触れ、志を持つ人と語り合う機会を持ってください。理想を現実に変える力は、志ある仲間との出会いの中で育まれていくのだと思います。では、以下の質問の答えをアウトプットしてから次ページへ進んでください。
問1:あなたの仕事やサービスは、「わかっているけどできない人」が行動を続けられる仕組みになっていますか?
問2:あなたには、理想や志を語り合い、自分を本気の行動へ導いてくれる仲間がいますか?
問3:問1、2の回答に対する課題はありますか?あれば今後、具体的にどう解決していきますか?
世の中への視点
PayPayとセブンが顧客データ統合
【要約】
ソフトバンクグループのスマートフォン決済大手PayPayとセブン&アイ・ホールディングスが、顧客データを統合する方向で最終調整に入りました。ID数は1億人超と国内最大級のポイント経済圏が誕生します。
●保有する顧客データの量と質が競争力を大きく左右する時代
人工知能(AI)の普及により、小売業では保有する顧客データの量と質が競争力を大きく左右する時代になっています。こうした中、PayPayとソフトバンクは、セブン&アイ・ホールディングスにそれぞれ1000億円規模を出資する方向で最終調整に入りました。三井住友フィナンシャルグループ傘下の三井住友カードも出資する見通しで、7月末にも出資内容や協業策が公表される予定です。協業の中心となるのが、PayPayとセブンの顧客IDの統合です。PayPayは国内に約7400万人、セブンの共通会員サービス「7iD」は約3900万人の登録者を抱えており、単純合算すると1億人を超える巨大な会員基盤となります。これは楽天グループやNTTドコモに匹敵する規模で、三井住友FGの「Vポイント」との連携も視野に入れています。
ID統合によって、セブンでの買い物に応じてPayPayポイントがたまりやすくなるほか、購買履歴や居住地域などを基に、顧客の嗜好に合わせたキャンペーンや商品提案が可能になります。セブンにとっては、これまで手薄だった決済分野を強化できる一方、PayPayや三井住友カードにとっては、全国約2万2000店舗のセブンを通じて利用機会を増やし、消費者とのリアルな接点を獲得できるメリットがあります。コンビニ業界では、ファミリーマートが楽天グループと、ローソンがPontaやKDDIと連携を深めています。セブンがPayPayと本格的に組むことで、コンビニ大手3社と決済・ポイント事業者の系列化が進み、業界の勢力図が大きく変わる可能性があります。今後は顧客データの確保を目的とした企業連携や業界再編が、さらに加速していくと考えられます。
●私の視点~大きな事業も、小さな事業も、ビジネスの土台は見込み客との継続的な関係にある~
今回の提携は、ビジネスのセンターピンは何かを考える上で重要過ぎる動きです。これからの競争力を左右するのは、店舗数や商品力だけではなく、どれだけ多くの顧客と継続的につながっているかです。単なる氏名や連絡先の数だけでなく、購買履歴、利用頻度、居住地域、嗜好などの行動データが顧客IDにひもづいていること(リスト)で、顧客に合った商品や情報を届け、再来店や継続利用を促せます。リストとは、売り込み先の名簿ではなく、必要なタイミングで思い出してもらうための「未来の顧客との関係資産」です。
私自身も本ニュースを見て、「リストの重要性」を再認識しました。詳しい経緯は省きますが、かつての私は、見込み客を集めることこそが、ビジネス成功の重要なポイントだと確信していました。しかし、2013年にFBL(現WA)を立ち上げてから、店舗ビジネスの集客活動から離れていく中で、その考え方が次第に薄れてしまいました。一時は「リストなど必要ない。(スモールジムのような)100人規模のビジネスなら、その都度集めればいい」という考え方に同意してしまったことさえあります。ビジネスの原則を見失っていた自分を、心の底から恥じています。
関連して、私は2026年6月末をもって、2007年以来続けてきた無料メルマガに終止符を打ちました。私にとっては大きな決断で、しっかり考えたつもりでしたが、現在、すでに再開に向けた準備を進めています。理由は、自ら情報を届けられるプッシュ型媒体を持っていないことが、ビジネスにおいて致命的だということを痛感しているからです。仮にInstagram等に1万人のフォロワーがいても、それで事業が前に進むわけではありません。それよりも、自分の考えに共感し、継続的に情報を受け取ってくれる方々が100人いる方が、はるかに価値があります。こうしたことは以前から私自身が言い続けてきたことです。にもかかわらず、それとは逆の判断をしている。まったく人間というのは成長しませんね・・。
PayPayとセブンの取り組みは、私たちのビジネスとは桁違いの金額や顧客数を扱っています。しかし、顧客と接点を持ち、その関係を強化し、必要なタイミングで価値を届けるという原則は同じです。大きな事業も、小さな事業も、ビジネスの土台は見込み客との継続的な関係にあります。今回のニュースは、規模は違ってもビジネスの原則は変わらないという、当たり前でありながら大切な事実を、改めて気づかせてくれました。では、以下の質問の答えをアウトプットしてから次ページへ進んでください。
問1:あなたのビジネスには、継続的に情報を届けられる「自社の顧客リスト」がありますか?
問2:過去には大切にしていたのに、今は実践できていないビジネスの原則はありませんか?
問3:問1、2の回答に対する課題はありますか?あれば今後、具体的にどう解決していきますか?
今週の一冊
●「成功」と「心の余裕」は両立できる
本書を紹介した理由は「不完全主義」という考え方に賛成だからではありません。このような「完全か、不完全か」といった、世の中で言われている正しいイメージ(この場合なら完全主義)に対するアンチテーゼ的な主張に違和感を覚えるからです。インパクトのある言葉ほど、そのまま受け入れるのではなく、自分なりの考えを持つことが重要です。本書で著者は現代人の心が休まらない理由として、終わらないタスク、増え続ける選択肢、不確かな未来、複雑な人間関係などを挙げています。そして、だからこそ「心のリトリート」が必要であり、「もっと楽に生きよう」と提案しています。
この考え方には、当たり前に賛同しますが、その一方で「成功者の大半は、生産性に縛りつけられた不安障害の塊である」と言われています。確かに、そのような人もいるでしょうが、こう言い切ってしまうことで、「成功すること自体がよくない」「成功するためには心の平穏を失わなければならない」という先入観を植え付けてしまいます。このような主張は、苦しんでいる人を助けることにはなりますが、その一方で成長を止めてしまう可能性もあるし、努力をしない方向性に誘導する可能性もあると思います。実際、心に余裕を持ちながら、大きな成果を出している人はたくさんいます。そういう人たちは、生産性に追われているのではなく、自分が本当に大切だと思うことに集中しています。仕事に振り回されているのではなく、自ら仕事を選び、人生を主体的に選択しています。つまり、ポイントは「何に追われ、何のために頑張っているのか」にあります。
目的を見失い、他人との比較や世間の評価だけを追い続ければ、成功しても苦しくなるでしょう。そうではなく、自分の使命や志が明確で、その実現のために行動しているのであれば、挑戦そのものが充実感につながります。「心のリトリート」とは、頑張ることをやめることではありません。本当に大切なものを見失わないために、自分の心を整える時間を持つことです。私は「成功」と「心の余裕」は両立させるものだと思っています。決して、二者択一で考えるものではありません。
●完全でも不完全でも、どちらでもいい
もちろん、著者が「頑張らなくていい」「成長しなくていい」と言っているのではありません。問題なのは、世間が決めた成功を自分の目標にしてしまうことです。自分の価値観が定まっていなければ、他人の評価や収入、肩書に振り回され、苦しくなります。大切なのは、自分にとって何が大切で、どのような人生を送りたいのかを考えることです。手放すべきなのは成功ではなく、「成功しなければ自分には価値がない」という思い込みだと思います。
私もこれまで「自分の価値観に沿って生きることが、自分の人生を生きることだ」と言い続けてきました。この時、「自分の価値観とは何か」を理解していなければ、そのような生き方は実現しません。自分の価値観というのは、日頃から本を読み、さまざまな考え方に触れ、人と対話し、自分の行動や感情を振り返るといった勉強と内省によって、少しずつ形づくられていきます。ところが、多くの人は読書も内省も実践していません。そこへ「自分らしく」「成功するにはこうすべき」「不完全でいい」といった、「自己啓発的な言葉」や「救いの言葉」が飛び込んできます。当然、その方が心地いいので、「あぁそうだったのか」的にそれを受け入れる。しかしそれは自分の価値観ではないので、身体が拒否してうまくいかない。結果、達成できない自分を責め、苦しみ、再び、救いと求めてて自己啓発セミナー等へ行く。自分の人生を実現したいのか、他人が決めた成功に振り回され続けるのか、「どっちなんだい?」ということです。
私に言わせてもらえば、完全でも不完全でも、どちらでもいいのです。完全を目指すことで前向きになれる人もいれば、不完全な自分を受け入れることで、一歩を踏み出せる人もいます。大切なのは、どちらが正しいかを決めることではなく、その考え方が、自分の望む人生の実現につながっているかどうかです。私自身に置き換えるなら、完全な部分もあれば、不完全な部分もあります。以前から私は「完全主義」ではなく、「徹底主義」という言葉を使っています。自分が大切だと決めたことは、文字どおり徹底的にやります。しかし、それ以外のことは、「どうでもいい」くらいの感じです。限られた時間とエネルギーを、自分にとって本当に大切なことに集中させる。そのほうが結果も出ますし、何より自分自身がラクに生きられます。各自にとって重要なのは、完全か不完全かではなく、「何を徹底し、何を手放すか」を自分で決めることだと思います。
編集後記動画
当号のポイントを約3~5分の動画で振り返ります。
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編集責任者
・遠藤 一佳
【モットー】
・人生を常に再起動する
・自分の価値観に基づいた人生を生きる
・同志、仲間とともに、社会を良くする活動の一翼を担う存在になる
【役職等】
・Well-preneur Academy(ウェルアカ)塾長
・(株)スモールジム取締役会長
・JATIキャリア支援委員
